東芝 製品の不良や欠陥を高精度にグループ化する教師なし画像分類AIを開発

東芝 2024年5月8日発表


 東芝は、製造現場に蓄積した検査画像における不良や欠陥の種類を教示作業なしでグループ化する「教師なし画像分類AI」に対し、独自の深層学習AIを用いることにより、ベンチマーク画像に対する分類精度を従来の27.6%から83.0%へと大幅に向上させることに成功したと、5月8日に発表した。

 「教師なし画像分類AI」は、製品検査をする上で不要となる背景パターンの特徴もAIが認識してしまい分類精度が落ちることが課題だったが、本AIは背景パターンから不要な特徴を無視し、製品の不良や欠陥に関する重要な特徴のみを学習して、高精度に画像を分類する。
 本AIにより、手間のかかる手作業なしに、半導体などの複雑な製品パターンを持つ検査画像を、不良や欠陥の特徴毎に高精度に分類し、品質改善に向けた分析プロセスを加速させることができる。

■本技術の特徴
 東芝は、背景パターンの画像から不要な特徴の学習を抑制することで、分類対象が含まれる目的画像から不良や欠陥などの重要な特徴のみを識別する教師なし画像分類AIを開発した。本AIは、深層学習AIを用いて背景パターンに含まれる不要な特徴を学習する「背景特徴抽出ネットワーク」を新たに導入し、不良や欠陥が含まれる目的画像の特徴を学習する「注目特徴抽出ネットワーク」と組み合わせた。これにより、背景パターンの不要な特徴を無視しつつ、目的画像から必要な特徴を効率的に抽出し、不良や欠陥を高精度に識別・分類することができる。
 同社は、実際の製品の背景パターンを模したベンチマーク画像を用いて本AIを評価した。縞模様を持つ背景パターン画像と、縞模様の背景画像の上に手書き数字が重なる画像を使用し、分類精度の検証を行ったところ、分類精度が従来の27.6%から83.0%に大幅に向上し、製造現場における実用化に十分なレベルを達成した。従来では、背景の縞模様の影響で手書き数字と背景の組み合わせで細かくグループが分かれていたが、本AIにより、目的の特徴である手書き数字のみの特徴でグループが分かれ、分類精度が向上している。
 本技術は、製造ラインの検査で蓄積される良品の検査画像を背景パターンに用いることで、製造工程でも効率的に活用することが可能である。背景パターンは対象画像の背景と厳密に一致する必要がないため、背景パターン画像の選定作業にかかる時間も削減できる。
 本AIを製造現場の検査工程に適用することにより、品質管理の精度と効率が大きく向上することが期待される。また、本技術による自動化により、技術者はより高度な分析プロセスに労力をかけることが可能となり、製造における全体的な歩留まりの改善につながる。
 本AIは製造分野の検査工程への適用だけでなく、天気や季節変動による背景の変動の影響で分類が困難だった監視カメラ画像への適用が見込める。