リコー 国土交通省の下水道応用研究で3Dプリンター活用のマイクロ水力発電の検討を実施

マイクロ水力発電装置の軽量化・機器作成期間の大幅短縮に成功

リコー 2023年4月4日発表


リコー 下水処理施設におけるマイクロ水力発電装置の活用イメージ
下水処理施設におけるマイクロ水力発電装置の活用イメージ

 リコーは、国土交通省が主導する下水道応用研究において、下水道施設における創エネルギー化技術の検討を実施し、3月に完了報告を行ったと、4月4日に発表した。

 リコーの新規事業創出の取り組み「TRIBUS(トライバス)」に採択された社内スタートアップである「WEeeT-CAM(ウィットカム)」、シーベル株式会社、金沢工業大学機械工学科 山部昌・瀬戸雅宏研究室の産学連携により、3Dプリンター製のマイクロ水力発電装置を開発し、下水処理場での活用を検討した。
 検討の結果、数kWの発電に成功し、従来の金属製マイクロ水力発電装置と比較して重量は水車部分25%、装置部分15%の軽量化を実現、水車の作成期間は約1か月から3日と大幅な短縮に成功した。水車の部分は樹脂でできているため、水中での耐久性も向上した。

 今後は、本発電機により発電した電気は、下水処理場内にある防災拠点での非常用電源やモビリティなどのバッテリーシステム、クローラー型の自動検査ロボット電源などでの活用も見込んでいる。日本国内の下水処理場でのマイクロ水力発電機の設置を検討するとともに、海外の新興国や欧米などでの導入も視野に検討を継続する。

今回作成したマイクロ水力発電装置イメージ

■背景
 下水処理の過程では、ごみや砂、汚れなどを沈殿させ、下水をタンクに送り込み、微生物の力を借りて汚れを分解する。微生物を活発に働かせるためには、常に水中に酸素を送り込まなければならず、そのプロセスには約75kWhと多大な電力が必要になる。年間の電力費は約1,100億円に相当し、電力消費量の低減による省エネとコスト削減が急務となっている。
 現状、一部の下水処理場にマイクロ水力発電装置が設置されているが、(1)水車効率が低く出力が小さい、(2)水力発電装置の機器コスト及び設置コストが高い、(3)機器重量が大きく、現場担当者の負担が大きい、(4)錆やすい環境で現行のマイクロ水力発電装置での使用は難しい、といった課題がある。
 このような課題から、下水道のグリーンイノベーションに向けて技術実証・応用研究に取り組んでおり、2022年3月に下水道応用研究の分野でリコーを代表とする提案が採択され、検討を実施した。

■検討内容

  • 水車形状の設計は低落差型のマイクロ水力発電専門会社であるシーベルと金沢工業大学と連携し、静岡県内の下水処理場での実証実験を行った。
  • 使用したマイクロ水力発電装置は、1つの装置に発電機が2機搭載され効率よく発電できることが特長である。また、既存の水路に水車をそのまま置ける開放型タイプのため、水力発電用のバイパス水路を新設する必要がなく、工事費が削減できる。
  • リコーの3Dプリンターテクノロジーを用いて、バイオマス由来の材料を使用した3Dプリンター製の羽根を組み込んだマイクロ水力発電機を作成した。一般的に使用されている3Dプリンター材料で作成した場合と比較し、水車羽根の強度は金属製に匹敵する2倍以上を実現。水中に長期間つけても強度が維持され、従来のマイクロ水力発電にも使用できることが分かった。