アドビ 日本のデジタル課題への取り組みを発表 デジタル人材育成を加速

 アドビは、日本社会が直面しているデジタル課題に対して、デジタルエコノミー(デジタルテクノロジーやデータを活用した経済活動)の推進、デジタルトラストの実現、デジタル人材の育成という3つの方針で取り組むことを、6月30日に発表した。特に喫緊の課題であるデジタル人材の不足に対して、「クリエイティブ デジタル リテラシー」を持つ人材の育成を加速する施策を新たに展開する。

デジタルエコノミーの推進
 世界中であらゆるものがデジタルに移行する中、娯楽や教育の場、企業など、より幅広い人がデジタルコンテンツを制作し、消費するようになった。SNSのような配信先となるチャネルやデバイスが拡大する中、多様な顧客体験のニーズに応えるには、より多くのコンテンツをより速いスピードで創出することが求められる。また、3Dやメタバースといった技術革新も急速に発展している。アドビは、あらゆる人のコンテンツ創出とデータ活用をテクノロジーで支援することでデジタルエコノミーを推進する。その新たな取り組みとして、デジタルの力で個人商店や伝統文化を活性化するプロジェクトを展開する。下北沢商店街で個人事業主のクリエイティブスキル強化支援を、7月中旬から開始する。

デジタルトラストの実現
 膨大なデータの活用が世界経済の成長を牽引し、加速度的に増えるデジタルコンテンツが人々の生活を豊かにする一方、デジタルにおける信頼性(デジタルトラスト)をどう担保するかという新たな課題も生まれている。アドビは、デジタル作品の盗用やディープフェイクといった問題にテクノロジーで対応するとともに、業界を横断した「コンテンツ認証イニシアチブ」を組織し、750社以上の参加企業とともに取り組んでいる。
 また、デジタル文書のセキュリティにおいては、PDFの開発元として、高い安全性と信頼性を備えるAdobe Document Cloudを提供し、セキュリティ要件が厳しい行政機関や金融機関などにおける重要書類の長期保存にも幅広く利用されている。
 顧客体験の分野においては、Cookielessへの対応、GDPRや個人情報保護法の改正といった企業が顧客のプライバシーに配慮したコミュニケーションをすることが求められている。アドビは、データ活用を行うためのデータガバナンス機能も搭載した顧客体験管理(CXM)ソリューション「Adobe Experience Cloud」により、企業がデータを活用し、より高度なパーソナライズした顧客体験を提供できるよう支援する。

デジタル人材の育成
 デジタル競争力の低迷は、日本社会における喫緊の課題となっている。IMDの調査「世界デジタル競争力ランキング2021」によると、日本のデジタル競争力は64ヶ国中28位と低く、特に「人材/デジタル・技術スキル」が62位と顕著に低い状況がある。アドビは、クリエイティブによるイノベーションと顧客体験の向上を牽引してきた知見と経験を活かして「データを解釈し、課題を発見する能力」と「課題に対してアイディアを引き出し、形にする能力」を兼ね備えた「クリエイティブ デジタル リテラシー」を持つ人材の育成に取り組んできた。今後、社長直下の専門組織を設置し、デジタル人材の育成を加速する。
 また、小中高等学校の教育現場に加えて、社会人に対しても、「学び直し(リスキリング)」の場を提供する。
 具体的には、東京都教育委員会が都立学校20校にAdobe Creative Cloudを採用した。また、関西学院千里国際高等部と共同で、学校のWebサイト来訪者データの分析を行う授業、「データサイエンス」カリキュラムを開発した。さらに、アドビは、あらゆる人のスキルアップ支援に官民一体で取り組む「日本リスキリングコンソーシアム」に参画する。そのほか、DMM WEBCAMPとAdobe Digital Learning Servicesが、「高度デザイン人材」育成を目的としたコラボレーションカリキュラムを共同開発した。