京セラ 繊維・アパレル業界の環境負荷低減に貢献 インクジェット捺染プリンターを開発

京セラ 2023年5月10日発表


 京セラは、繊維・アパレル業界で長年の課題であった、捺染時の水質汚染などの解決に貢献する、デジタル捺染の新製品インクジェット捺染プリンター「FOREARTH」(フォレアス)を開発したと、5月10日に発表した。2023年秋頃に先行販売開始予定である。

インクジェット捺染プリンター 「FOREARTH

 従来、繊維・アパレル業界では、生地を染める際に、スチームや洗浄などの工程で大量の水を使用しており、その排水による水質汚染が世界的な問題となっている。加えて、在庫過多による大量廃棄問題も注目されており、早急な対応を迫られている。
 京セラは、これらの課題解決に貢献するため、高速・高画質印刷を実現するインクジェット技術と、京セラドキュメントソリューションズのインク・機器開発技術を融合させ、以下の3つの特長を有した製品を開発した。

【「FOREARTH」の特長】
(1) Water Free Concept:水の使用量を限りなくゼロまで削減した生地印刷
 一般的な捺染では、染料を使用するが、前処理や後処理であるスチーム、洗浄といった工程で大量の水を使用する。
 本製品は、独自の顔料インクと前後処理液を同時に印刷することで、印刷、乾燥以外の工程を不要としたオールインワンプリントシステムである。これにより、従来の染料アナログ捺染に比べ、水使用量を99%削減することを可能とした。
 また、従来の捺染に必要であった前後処理機やスチーマーなどの大規模な設備機器が不要となることから、エネルギー消費量とCO2排出量の削減にも貢献する。

(2) Creative Free:独自開発の顔料インクで柔らかな風合いと、高い堅牢性を両立。フルカラー印刷を多種多様な生地で実現
 染料捺染では、生地の種類に応じて異なるタイプの染料・機器を準備する必要がある。一方で、本製品は、独自の化学材料技術と新しい印刷プロセスによって、顔料インクの発色・風合い・堅牢性といった品質課題を克服した。これにより、システムやインクを変えずに、綿、シルク、ポリエステル、ナイロン、混紡など多種多様な生地への高精細な印刷を可能とし、レディースファッションから、スポーツウェア、ベビーウェア、ホームテキスタイルまで幅広いカテゴリーで利用できる。

(3) Location Free: 水資源に依存しない捺染で、設置場所を選ばず、適地・適量生産により、物流コストや在庫の削減に貢献
 従来のアナログ捺染工場は、大量の水を必要とするため、水資源の豊富な場所に設置されてきた。本製品は、印刷にほぼ水を必要としないため、設置場所の制限をなくし、適地・適量生産を可能にする。
 また、本製品は印刷と乾燥のみというシンプルな工程で、デザインから生産までの工数を大幅に短縮。これにより、小ロット印刷や短納期にも対応できるため、物流コストや余剰在庫の削減に貢献する。
 さらに、従来の捺染印刷では、複数の印刷工程を別設備で行うため、大規模な生産設備と設置面積が必要だったが、本製品では、非常に小さな面積で印刷生産設備を構築できる。

■「FOREARTH」の基本性能
《プリントヘッド》 京セラ製循環インクジェットプリントヘッド
《プリントヘッドの数》 最大18本装備
《インクの種類》 水性顔料インク
《色の数》 最大8色 (CMYK+4色の特色)
《インクタンク容量》 10L
《最大印刷幅》 1,800mm
《最大布幅》 1,850mm
《解像度》 600×600dpi
《印刷速度》 250㎡/h (標準モード)
《サイズ(幅×奥行×高さ)》 約4,600×2,000×2,000mm
《重量》 約3,500kg