JBMIA 事務機械の「全世界出荷に関する2025年の見込み及び2026年の予測」を発表
一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会 2025年12月9日発表
(一社)ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)は、全世界市場を対象とした事務機械の出荷に関する実績と本年見込み及び予測をとりまとめ、12月9日に発表した。
なお、この出荷見込み及び予測の調査にあたっては、外部の調査機関(株式会社インターウォッチ)に委託し、取りまとめを行った。本資料の内容は、会員企業の2024年の出荷実績、2025年見込、2026年予測と会員企業以外の各年度の想定規模を合計したものである。また、本予測数量及び金額は、事務機械本体のみを対象としている。2024年及び2025年はその年の実勢レートを用い、2026年の予測については2025年の実勢レートをベースに為替影響を除いて金額を算出している。

■概況


【2024年】
2024年の事務機械の全世界出荷金額は、エネルギー価格、原材料費、物流費などの高騰が継続していることによる製品単価の上昇や円安などを背景に、前年比109.0%、国内が100.7%、海外が110.3%となり、海外市場が牽引する形での増加となった。
2024年においては2023年からの為替変動幅が大きく、製品単価の上昇もあったが、それ以上に出荷金額の拡大に大きな影響を与えたとみられる。
品目別では、「複写機・複合機」「ページプリンター(MFP)」「ページプリンター(SFP)」「ビジネスインクジェットプリンター」「大判インクジェットプリンター」「デジタル印刷機」が前年と比べて増加、一方、「データプロジェクター」「電卓&電子辞書」「シュレッダー」の3品目については前年と比べて減少となった。
【2025年見込】
2025年の事務機械の全世界出荷金額については、2024年比97.4%、内、国内が同101.4%、海外が同96.8%の見通しである。
事務機械9品目の全世界出荷金額の約3分の1を占める「複写機・複合機」が前年比94.1%で減少見通しの影響が前年割れの要因としては大きくなるものと見込まれる。
全体的に減少が見込まれる中、増加が見込まれるのは「ビジネスインクジェットプリンター」「大判インクジェットプリンター」「電卓・電子辞書」「シュレッダー」の4品目である。特に「ビジネスインクジェットプリンター」「大判インクジェットプリンター」は増加傾向が継続している品目である。
【2026年予測】
2026年の事務機械9品目の全世界出荷金額については、2025年比99.6%、内、国内が同98.6%、海外が同99.8%の予測である。品目別では「ビジネスインクジェットプリンター」「大判インクジェットプリンター」「ページプリンター(MFP)」はプラス成長が予測されるが、他の6品目については減少すると予測される。
その中でも減少幅が大きいのは「データプロジェクター」であり、前年比83.3%の予測である。
■品目別予測
(1)複写機・複合機


【2024年】
《国内市場》
国内市場の2024年は、前年比で数量ベース99.3%、金額ベース102.9%となり、数量ベースではほぼ横這いであったが、金額ベースでは増加となった。金額ベースでの増加要因としてはハード本体の製品単価の上昇が挙げられる。
《海外市場》
海外市場の2024年は、対前年比で数量ベース100.4%、金額ベース111.7%となり、数量ベースではほぼ横這いであったが、金額ベースでは増加となった。金額ベースでの増加要因としては為替影響が最も大きかった。
【2025年見込】
《国内市場》
国内市場の2025年は、数量ベースでは約44万5千台と2024年比では99.8%と横這いでの着地見込みである。
《海外市場》
海外市場においては、全体的にオフィス回帰の動きもみられるが、リモートワークの定着やデジタル化に紐づくペーパーレス化の影響などによって需要回復せず、2024年比で数量ベース91.5%、金額ベース91.9%と、数量、金額ともに減少での着地見込みである。
【2026年予測】
《国内市場》
国内市場の今後の方向としては、ハード本体については平均単価が極めて小幅であるが、下落傾向で推移して行くと予測され、2026年は数量、金額ともに微減傾向で続いていくと予測される。
《海外市場》
海外市場においては、これまで減少傾向にあった複写機/複合機市場を数量ベースで下支えしてきた中国市場が減少に転じると予測したことや、欧米市場においても引き続き需要回復が出てきそうもなく、全体的に減少傾向で推移していくものと予想される。
*「複写機・複合機」の対象製品は電子写真方式のみである。
(2)ページプリンター(MFP)


【2024年】
《国内市場》
国内市場の2024年は、前年比では数量ベース103.1%、金額ベースで94.7%となった。
《海外市場》
海外市場は、モノクロのページプリンター(MFP)は新型コロナ以降2023年まで減少傾向がみられたが、2024年はその反動による市場への供給が大幅プラスとなったことによって、前年比では数量ベース111.6%、金額ベースで128.1%となった。
【2025年見込】
《国内市場》
国内市場は、2025年の出荷見込みは約18万5千台と対前年比で107.9%と大幅増での着地見込みとなる。モノクロのページプリンター(MFP)機は、スキャニング用途が必要な病院や店舗などでの底堅い需要をとらえて徐々に市場に浸透しつつあり、年ごとに需要の凹凸のために減少に転ずる事もあり得るが、基本的には増加して行くと予測される。
《海外市場》
海外市場は、2025年の出荷見込みは約1,189万3千台で前年比93.1%と大幅減での着地見込みとなる。ただし、この大幅減については2024年の大幅に増加したところからの反動による減少となる見通しである。
【2026年予測】
《国内市場》
国内市場は、海外のようにほとんどがA4サイズというような市場ではない。2026年以降においては、A4機が市場を牽引し、A4/A3トータルで今後も増大して行くと予測される。
《海外市場》
海外市場は、北米、欧州、中国、中国以外のアジア地域においてはモノクロのページプリンター(MFP)が2024年は過去の大幅減からの反動による大幅増となったが、2206年予測は従来の減少傾向に戻ると想定される。その一方で、カラーのページプリンター(MFP)は全ての地域で微増の推移となると予測される。
*「ページプリンター(MFP)」の対象製品は電子写真方式のみである。
*MFP=Multi-Function Printerの略称
(3)ページプリンター(SFP)


【2024年】
《国内市場》
国内市場の2024年は、前年比では数量ベース98.6%、金額ベースで95.5%となった。既に更新需要が中心の市場であり、更新サイクルの長期化に加え、大手企業の一括商談案件の減少、ペーパーレス化の浸透などが減少要因である。
《海外市場》
海外市場の2024年は、前年比では数量ベース107.9%、金額ベース107.4%と増加した。
【2025年見込】
《国内市場》
2025年の出荷見込みは、約47万台と前年比で93.5%と減少での着地見込みである。国内における自治体や病院などにおける出力用途などの業種、業務用途向けが底堅い需要が継続しているものの、市場の大半を占める一般オフィス需要の減少幅が大きいことがトータルでの減少要因である。
《海外市場》
2025年の海外市場は、約856万1千台と前年比で101.7%と微増での着地見込みとなる。
【2026年予測】
《国内市場》
国内市場においては業種、業務用途向け以外の一般オフィスでの需要回復は今後も見込めないことから、2026年においても減少するものと予測される。
《海外市場》
新型コロナ以降、経済活動などは戻って来ているが、ワークスタイルの変化やペーパーレス化の更なる進展などにより、今後も市場規模は回復せず、2026年においても継続的な減少傾向の流れは変わらないと予測される。
*「ページプリンター(SFP)」の対象製品は電子写真方式のみである。
*SFP=Single-Function Printerの略称
(4)ビジネスインクジェットプリンター


【2024年】
《国内市場》
ビジネスインクジェットプリンターは、依然として店頭販売ルートを中心とした販売チャネルで多く販売されており、2024年は前年比で数量ベース104.9%、金額ベース103.6%と増加した。
《海外市場》
海外市場においてもビジネスインクジェットプリンター市場は増加傾向が継続しており、2024年は前年比で数量ベース105.5%、金額ベース107.8%の増加となった。
【2025年見込】
《国内市場》
2025年においても市場は引き続き増加傾向にあり、2024年比で数量ベース105.4%、金額ベース103.1%での着地が見込まれる。
《海外市場》
海外市場においては、カートリッジを用いたプリンターから大容量インクボトルに対応したプリンターへのシフトがさらに加速しており、新興国中心での販売が中心であったが、先進国地域においてもオフィスにおける導入が進んでいることで、2025年も2024年比で数量ベース107.8%、金額ベース111.2%での着地が見込まれる。
【2026年予測】
《国内市場》
国内市場2026年以降においても、ビジネスインクジェットプリンターの市場は継続して拡大していくことが予測され、104%〜105%の成長率で市場規模が増加していくものと予測される。
《海外市場》
海外市場は、中国や東南アジア、中南米や東欧地域などの新興国地域の市場に加え、今後は欧米市場を中心とした先進国地域においてもオフィス市場を中心に市場が拡大、また、オフィス市場で競合となるレーザープリンタ市場を侵食する形で、海外市場は国内市場以上にビジネスインクジェットプリンター市場は増加傾向で推移していくものと予測される。
(5)大判インクジェットプリンター


【2024年】
《国内市場》
国内市場は、海外市場と同様に設計図出力ニーズに占める割合が高く、2024年の実績としては前年比で数量ベース100.7%、金額ベースで90.2%となった。
《海外市場》
海外市場は、ハードウェア出荷台数のウェイトが高い設計図出力を主目的とした商品は先進国、新興国を問わず減少傾向にある一方で、サインや装飾、テキスタイル出力をターゲットとした単価の比較的高い商品においては、アナログ印刷からデジタル印刷へのシフトをベースとしたエントリーメーカーの拡大が続いている。
【2025年見込】
《国内市場》
国内市場の2025年は、2024年比で数量ベース103.5%、金額ベースで114.7%と増加の見込みであるが、一時的な増加となるものと想定され、数量ベースの減少トレンドは変わっていない。
《海外市場》
海外市場は、2024年比で数量ベース100.4%、金額ベースで105.3%となる見込みであるが、金額ベースの増加については、製品単価の高いテキスタイル向けプリンター市場の拡大が背景にある。
【2026年予測】
《国内市場》
国内市場は、数量ベースで多数を占める設計図向けの出力ニーズが減少するに伴い、ハードウェアの出荷台数も減少していくものと予測される。
《海外市場》
海外市場における2026年以降については、国内同様、数量ベースで多数を占める設計図向けの出力ニーズが減少するに伴い、ハードウェアの出荷台数も減少するものの、製品単価の高いテキスタイル向けのプリンターを中心とした産業向けの大判インクジェットプリンターの市場が拡大することにより、全体では数量ベースでは微減、金額ベースでは増加傾向で推移していくものと予測される。
(6)データプロジェクター


【2024年】
《国内市場》
2024年実績としては、国内市場では学校の入札案件増加によって前年比では数量ベース107.3%、金額ベース108.2%の増加となった。
《海外市場》
海外市場については、2024年は欧州経済の不安定化や中国経済の低迷などを背景に、教育向け予算縮小に伴う入札案件の不調や民間企業の物品購入予算削減の動きが目立ち、前年比では数量ベース86.9%、金額ベース94.1%の減少となった。
【2025年見込】
《国内市場》
国内市場の2025年は、物価高騰により企業会議室への安価なモニター導入が一般化したことで企業におけるプロジェクターのニーズが縮小したことや、学校案件においても操作が簡単な電子黒板の需要がさらに高まったことから数量ベースで前年比では80.3%、金額ベースで81.1%と大幅に減少する見込みである。
《海外市場》
海外市場は、2025年は引き続き世界経済が不安定の状態が続き、さらに米国では大統領による米国教育機関向け予算削減が実行されることで市場は減少する見込みである。
【2026年予測】
《国内市場》
国内市場では、学校での電子黒板への入れ替え、企業における中小会議室でのモニター使用が加速することが想定され、市場としては2026年以降も減少していくものと予測される。
《海外市場》
海外市場においては、市場環境の悪化により、欧米や中国など海外市場に注力していたメーカーの市場からの撤退などの動きもあったことや海外においても代替商品に入れ替わる傾向が強まるものと想定され、海外市場においても市場は減少していくものと予測される。
(7)電卓&電子辞書


【2024年】
《国内市場》
2024年の電卓市場は、数量ベースでは対前年比96.7%で減少、金額ベースでは112.5%と増加した。この動きは一般的な表示電卓において価格改定が要因である。
電子辞書市場は、これまでのGIGAスクール構想による学校でのノートPCやタブレット導入が進んだことにより、電子辞書の需要は急速に減少した。
《海外市場》
電卓市場が2024年は数量が減少したにもかかわらず金額が増加したのは、円安の為替影響の他、表示電卓よりも価格帯の高い関数電卓の市場に占める割合が高いということが要因である。
電子辞書市場の中国市場以外は実質的に存在せず、中国の需要減少により減少した。
【2025年見込】
《国内市場》
2025年の電卓市場は数量ベースでは対前年比98.6%で着地見込みである。
電子辞書市場は需要が減少しているが、国内市場は学校等での案件により一時的な回復となる見込みである。
《海外市場》
電卓市場については、表示電卓の需要が減少、関数電卓の需要が横這いだった。
電子辞書市場は中国での需要が回復せず、数量ベースでは対前年比97.6%で着地する見込みである。
【2026年予測】
《国内市場》
電卓市場は減少基調で推移していくとはいえ、新商品が市場に継続して上市されており、スマートフォンなどの媒体にシフトするといったことも急速には起きていないこともあり、需要が大幅に減少していくといった方向性にはない。
電子辞書市場はハードデバイスからソフトウェアでの販売へシフトしていくことから市場は減少していくものと予測される。
《海外市場》
電卓市場はスマートフォンなどの媒体へのシフト影響で、廉価でも需要としては落ちていくと予測される。
電子辞書市場は、中国市場での経済市況の悪化の他、電子辞書以外の製品が在宅学習用で使用されるなど、中国市場においても市場は減少していく方向性にある。
*「電卓」には100円均一ショップ等で販売されている海外製の低価格製品は含まない。
(8)デジタル印刷機


【2024年】
《国内市場》
国内市場は、2024年は数量ベースで前年比では89.7%、金額ベースでは99.5%であった。金額ベースにおいて数量ベースほどには減少しなかったのは、本体価格の改定があったことが要因としては大きい。
《海外市場》
海外市場は2024年は数量ベースでは大幅に落ち込んだものの、金額ベースでは対前年比106.5%と上回る着地となった。金額ベースでの伸びについては、本体価格は大幅に上昇していないことから、為替の影響が最も大きな要因になったものと想定される。
【2025年見込】
《国内市場》
国内市場においては自治体や文教においては底堅い需要が維持されてきたものの、特に文教において、生徒数の減少に伴う学校数の減少も数量ベースでの市場に影響を与えており、2025年は数量ベースでは前年比89.8%、金額ベースでは101.1%で着地するものと見込まれる。
《海外市場》
海外市場は、期待されていた新興国地域における需要が伸びず、2025年は数量ベースでは前年比96.4%、金額ベースでは97.2%で着地するものと見込まれる。
【2026年予測】
《国内市場》
国内市場の2026年はA3インクジェット複合機や電子写真の複合機等からリプレースされる傾向も継続していることから、今後も市場にマイナス影響を与えていくものと予測される。
《海外市場》
海外市場は、東南アジアやアフリカなどの新興国地域などにおいて市場を下支えするものと期待されていたが、電子黒板やタブレット等の導入などによってICT化が進んでおり、数量ベースでは国内市場よりも減少幅が大きい流れで減少していくものと予測される。
(9)シュレッダー


【2024年】
《国内市場》
2024年の大型機市場は非会員メーカーによる値引き販売が激しく、会員メーカーの実績減が目立ったことや、大手企業及び官公庁、公共機関の環境対応を重視する溶解処理ニーズが高まっている流れの中、数量ベースでは前年比72.0%と市場規模が大幅に減少した1年となった。
小型機市場については、在宅需要の落ち込み等の要因から、前年比で数量ベース93.3%、金額ベース96.2%と減少した。
【2025年見込】
《国内市場》
大型機市場の2025年は、2024年比で数量ベース91.6%、金額ベース104.6%で着地する見込みである。
小型機市場については、在宅ニーズも落ち込み減少傾向にあったが、2020年に購入したユーザーの一部が2025年に買い替えることとなり、2024年比で数量ベースで106.3%と瞬間的に大幅増になる見込みである。
【2026年予測】
《国内市場》
大型機市場は、大量廃棄は溶解処理を行い、少量処理を行うのはシュレッダーを用いるといった処理パターンで対応する大手企業及び官公庁や公共機関が増加傾向となることが想定され、2026年以降も減少していくものと予測される。
小型機市場については、故障するまで使用傾向が一般化していくことで、5年で買い換える企業が減少し、市場も減少傾向が続いていくものと予測される。
■事務機械の全9品目の全世界の出荷実績と予測

※図表は全てJBMIA提供

