リコー AI活用で機器の保守サポート業務を強化 ダウンタイム最小化へ

リコー 2024年3月15日発表


 リコーは、機器の保守サポート業務におけるプロセスDX(*1)に独自の大規模言語モデル(LLM)などのAIを活用することで、業務効率化と機器のダウンタイム(故障などで機器が使用できない時間)の最小化を目指し取り組むと、3月15日に発表した。

 国内市場において販売・サポートを担うリコージャパンでは、複合機やプリンターなどのリコー製品の安定稼働を支えるために全国に約4,500名のカスタマーエンジニア(CE)を配置し、障害発生時は必要に応じてCEが顧客先に訪問して機器を修復する。万一、難易度の高い障害が発生した場合は、技術支援部門のテクニカルサポートエンジニア(TSE)と連携して解決を図る。
 こうした現場のCEとバックヤードのTSEとの連携をより一層効率化し、機器のダウンタイムを最小化するために、リコージャパンでは保守サポート業務のプロセスDXに取り組んでおり、その一環としてAI活用を開始した。

 取り組みの1つが、独自の解析AIの活用である。顧客先で修復作業を行うCEがサービスマニュアルや過去の修復事例などの膨大なデータから適切な情報を検索する業務を効率化するための情報検索型AIボットを開発し、東日本地区での運用を始めている。今後、効果検証を続けながら展開地域を全国に拡大していく。
 また、2つ目の取り組みとして、リコーが独自開発した大規模言語モデル(LLM)をベースに、リコーグループに蓄積された修復事例やサービスマニュアルを学習させてカスタムした「保守ドメイン適応モデル」を適用した質問応答型AIチャットボットの検証を開始した。専門用語などのドメイン知識を適切に学習させるためのさまざまな工夫や、自動生成した回答文が確かな情報に基づいた内容かを確認する検疫機能の付加などにより、回答文の信頼性を向上させ、業務での実効性を高めるための取り組みを進める。

 リコーは今後も、AIを活用したプロセスDXに積極的に取り組んでいく。社内実践で得たノウハウを盛り込み、顧客が自社の業種業務に合わせて利用できるAIサービスの提供に活かすことで、顧客が取り組むオフィス/現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援していく。

■AI活用(1) 情報検索型AIボットの運用開始
 CEとTSEが効率的に連携をするため、CEからの問い合わせ手段を電話からMicrosoft TeamsやMicrosoft Power Platformを活用した方法に移行。
 さらに、現場CEが問い合わせ内容をシステムに入力すると、情報検索型AIボットがサービスマニュアルや過去の修復事例などの情報を検索し、メンテナンス事例等を一次回答として現場CEに自動返信する仕組みを構築。
 TSEに代わり、情報検索型AIボットが情報検索をアシストすることで、CEへの一次回答にかかる時間を短縮するとともにTSEの業務負荷を低減。
 電話の折り返し対応やTSE間の情報共有といった付帯業務の煩雑さも解消し、効率的な対応を実現。TSEは難易度の高い障害の解決サポート業務により集中できる環境づくりを進めた。

■AI活用(2) 質問応答型AIチャットボットの検証開始
 リコーが独自開発した大規模言語モデル(LLM)に、サービスマニュアルや修復事例などを学習させて、リコーが行う保守サポート業務向けにカスタマイズした質問応答型AIチャットボット「保守ドメイン適応モデル」を開発し、検証を開始。
 業種や業務ごとに使用されている専門用語など、ビジネスドメイン固有の表現や語彙に適応するためのドメイン適応技術(Domain-Adaptive Pretraining:DAPT)を活用することで、リコー製品の特徴や保守用語の知識を獲得。例えば「ジャム」を食べ物ではなく、紙詰まりと認識するなど、CEからの問合せ内容を理解し、回答を自動で生成。

(*1) リコーグループで社内推進しているDXの取り組み。プロセスの一部ではなく全体を、デジタルとデータを活用して変革すること。